彦根城を訪ねて武家文化の美と出会う旅
- gallery陽々youyou
- 11月22日
- 読了時間: 4分
大刀剣市の後、どこか刀装具に関連する歴史的な名称に行きたいな〜と思いました。今回の旅は、国宝・彦根城を訪ね、城下に息づく井伊家の武家文化と刀装具の魅力を探索します。藻柄子宗典が残した作品にも触れながら、歴史の中に息づく美意識を紹介します。
彦根城―静謐さの中に佇む国宝天守
滋賀県彦根に佇む彦根城が着工のきっかけになったのは、井伊直政が、慶長5年(1600年)関ヶ原の戦いの後、その軍功により18万石にて近江国北東部、西軍石田三成の居城であった佐和山城に封ぜられましたが、すぐに徳川家康より、佐和山城から琵琶湖岸に近い磯山に居城を移すように命じられたことです。残念ながら、直政は慶長7年(1602)に関ヶ原で負った傷が癒えず、佐和山城で死去しました。そのため、幼少であった井伊直継が家督を継ぎ近江彦根藩二代藩主となりました。慶長8年(1603)、城地選定が行われ、直政の遺志を継ぎ、琵琶湖に面した彦根山に彦根城の築城が決定しました。慶長9年(1604)に着手し、天守閣は関ヶ原の戦いを耐え抜いた大津城、天秤櫓は長浜城から移築されました。慶長12年(1607)に完成しました。美しいだけでなく、城本来の機能でもある軍事面にも優れています。昭和27年(1952)に国宝に指定されています。
池泉の庭 玄宮園
玄宮園は、江戸時代には「槻之御庭」と呼ばれていました。延宝5年(1677)から7年にかけて、4代藩主井伊直興によって作庭された大規模な池泉回遊式庭園です。昭和26年に国の名勝に指定されています。庭の中央に掘られた池には、大小4つの中ノ島が作られています。そこには、さまざまな形式の橋が架けられて、お茶室に誘うような道筋になっています。私たちが行った時間帯は、すでに人も少なく、玄宮園を独り占めしたような気分になれました。歴代の殿様も、池に映る自分を見たのかもしれないと思うと、不思議な気持ちになりました。社交の場だけでなく、茶室はとても重要な役割をしていたことが伺えました。
夢京橋キャッスルロード
彦根城の外堀にかかる京橋から歩いていくと、統一された江戸時代の城下町風な街並みが、広がっています。地元の名産物を食べることができたり・買えたり・良いとこ尽くしです。城の周りには、中学校、高校や大学と現代の彦根に住む人たちが、昔の伝統を大切にしていて、その時代に誇りを持ち、寄り添いながら暮らしている姿が感じられました。
刀装具と彦根
彦根城博物館には、井伊家伝来の藻柄子宗典 赤銅の武者合戦図大小鐔が所蔵されています。今回は宗典を彦根ゆかりの金工として紹介したいと思います。喜多河宗典一派は彦根彫と呼ばれていて、作品に銘「江州彦根中藪住藻柄子喜多河入道宗典製(花押)」と切っているものがあることから、彦根中藪に住んだことがわかります。中藪は彦根城から、1.8km徒歩で約30分のところに位置します。「近江国興地志略」という本に、彦根の朱具足は中藪土橋村で製作されたということが書かれているようで、中藪は武具関係の職人が住んでいたことが考えられます。年号を添えた銘に、延享5年(寛延元年 1748)や寛延3年(1750)があることから、宗典は江戸中期の作家と言えます。鐔を多く製作していて、少数ではありますが、小柄、縁頭、目貫も作っています。鐔は鉄または、赤銅を地金として、濃密な春秋花鳥図を高彫色絵にするものと、和漢の人物図や武者を肉彫地透にして、松樹などを配した二つが代表的な作風です。
この作品は、艶やかな質の高い赤銅地を、やや重ねを厚く作り込んでいます。古美濃を思わせるような、華麗で優美に、菊花や草花を鋤出彫にしていて金色絵を施し、華麗で、美しい庭園が手のなかにあるような、豊かな気持ちにさせてくれます。
プチ鑑定ポイント♡
江戸時代から人気があり、一世を風靡した藻柄子宗典の作品には、多くの偽物や模作が作られました。さまざまな銘が混在していて、銘だけでの鑑定は少々やっかいです。しかし、最も肝心の作を比べれば一目瞭然です。「鉄地丸形の鐔に武者や仙人を肉彫地透にして、金覆輪をかけた量産品は、宗典正真作とはいえないものばかりである。」と刀装小道具講座７にも書かれています。いずれも彫りが荒く下手で、会津や京都で製作されたと言われています。上記画像のような優美で品のある作からは程遠いものですので、素直な目で観れば鑑定も容易なのではないでしょうか。
結びに
彦根城で触れた静かな武家文化の余韻は、刀装具の中にも確かに息づいています。華麗な藻柄子宗典の作品には、端正な美を感じます。次回は、どうしても行ってみたかった「侍の旅②竹生島」を武家文化の美しさと刀装具に秘められた魅力を合わせてお届けいたします。Stay tosogu & sword minded : )
参考：
刀装小道具講座7 諸国編(下) 若山泡沫
最新情報をお届けするニュースレターのご登録はこちら↓です。
コメント